- インターネット
- 序章 インターネットの力
□インターネットとは、「世界中のすべてのコンピュータをつなぐコンピュータ・ネットワーク」である。インターネットの重要な特徴の一つは、
つながっているコンピュータは、ほかのつんあがっているコンピュータと自由にコミュニケーションをしてしまうことである。インターネットは世
界中のコンピュータが「いつでも」つながっていること、双方向の自由なコミュニケーションができること、そして、コンピューターは数や文字
から動画まで、きわめて高速にかつ大量にあつかえることなどを考えると、インターネットの上に築かれている新しい国際社会や生活に対
して、既存のイメージをあてはめることはむずかしいことである。インターネットが持っている色々な意味のうち、もっとも大きな意味は、デ
ジタル・テクノロジーが人間のいろいろな知的活動を支えるようになった現代に、デジタル・テクノロジーの上で人間や世界がどのように変
わっていくかということを考えるための体験の場である。
□インターネットで大事なことは、インターネットは国という概念とは全く独立に、国境を越えて発展してきたという経緯である。インターネッ
トによるコミュニケーションのは「地球」という空間の概念を大きく変えていて、インターネットによって人間は新しい感覚をもって地球の上で
生きていくようになるであろう。
□パソコン通信とインターネットの根本的な違いは個々のコンピュータが直接話す関係にあるインターネットに対して、パソコン通信は中心
にある一つのコンピュータに、たくさんのコンピュータが接続していくというものなのである。
□インターネットは地球全体を包む新しい日常的なメディアとしてさまざまな期待が持たれている。
□地球をすっぽりと包み込む情報交換の基盤―インフラストラクチャー―、それがインターネットであり、人間はいまインターネットの上で社
会活動を営むチャンスを獲得しつつある。今までいろいろな制約のもとで、社会活動してきたが、インターネットのある世界ではそういった制
約がいくつかがなくなり、新しい社会活動が起きてくるのだ。
□今世界中で注目されているインターネットだが、インターネットの受け入れ方やインターネットの考え方は国によってずいぶん違っている。
インターネット上でのコミュニケーションは個人を重視した開放的な性格を色濃く持っている。そのため、本質的に個人主義に立脚してつくら
れていったアメリカのインターネットと、強い権威と管理主義のもとに築かれてきた知識体系や情報体系に影響されているヨーロッパやアジ
アのインターネットとは意味が相当違うのである。
□インターネットは個人個人がそれぞれに存在して、活動して、コミュニケーションをして、それぞれの役割を果たし、サービスを提供すると
いうような形の地球全体を包む一つの世界をつくりつつある。
- 第一章 インターネットの仕組み
□いまインターネットが急速に発展して広がっている理由をその原理、動作の仕組みやその設計方針の視点からさぐっていくと、インターネ
ットのもっとも重要な特徴は、その「規模」の大きさである。規模がダイナミックにふえていくということに耐えられる仕組みが開発されてきた
ことによってインターネットはここまで大きくなったのである。
□インターネットは大規模なネットワークである。「インターネット」という言葉は、ネットワークのネットワークという意味が語源である。インタ
ーネットの仕組みは鉄道の仕組みに大変似ている。個々のネットワークは、自立した運営がなされ自立したサービスを提供している。インタ
ーネットを構成しているネットワークが相互に接続されて、インターネットはできているのである。鉄道網の全体のオーナーがいないのと同
様に、インターネットの世界にも統一的な制御や支配をしている存在が基本的にはない。
□インターネットの世界というのは、既存のデータ通信の仕組みと違って知性のない端末とホスト・コンピュータを結ぶためのインフラストラク
チャーではないということが前提である。インターネットではコンピュータとコンピュータが話すのである。
□プログラムが単純であるということは二つの良い結果をもたらした。一つはそのプログラムは小さなコンピュータでも動くということ。もう一つ
はそのプログラムは誰にでも書けるということである。小さなコンピュータで動くということはインターネットにつながりうるコンピュータの数を増
やし、またプログラムがやさしいということは、インターネットのプログラマーが増えるということである。つまりインターネットを支えるエンジニア
がたくさんいるということになる。
- 第二章 インターネットの空間
□インターネットの空間はインターネットを使ってきた人々の要求に基づいてつくられてきた。そもそもは1969年にアメリカのARPAネットの実
験が最初で、それが1980年に始まったCSネットの計画を経て、いまのインターネットに至っている。ARPAネットは国防総省の一機関では
あったが、高等研究の一環としてコンピュータ・サイエンスを研究するためのネットワークであった。当時のコンピュータはいわゆる「バッチ式」
のコンピュータで主に複雑な数値計算に使われていた。コンピュータ・サイエンティストはバッチ式の仕事を投げ込んで答えを待つという仕事で
はなく、コンピュータを働かすこと自体の研究、つまりコンピュータのプログラムを作り、その作業をするために連携が自由にできるネットワーク
を求めた。コンピュータ・サイエンティストが研究しているプログラムというのはソフトウェアである。コンピュータのソフトウェアはある人が作り出
した後は他の人がそれを使いながら、新しいことを創造していく作り方が効率的なため、コンピュータ・サイエンティストはソフトウェアを共有した
り交換したりしながらつくっていく環境を強く求めるようになったこれがコンピュータ・サイエンティストたちの間からコンピュータ・ネットワークが生
まれる動機であった。
□人間の活動は本質的に多くの知識や情報へのアクセスと人間同士のコミュニケーションによって成り立っている。情報や知識を幅広く交換し
たり、共有したりすることを支えるインターネットはまさに知的な人間活動全般にわたる重要なインフラストラクチャーになっていると言えるわけ
である。インターネットの空間が広がるにつれて「鑑別」という仕組みがどんどん重要になってくる。日本では国名として「.jp」を使うことにした。
最上位の鑑別子が一つだけでは不便なことが起こるため、同じ名前であっても組織の種類が違う場合にはそれぞれで使えた方がよいと考え、
個別の名前と「.jp」との間にもう一個、組織の性格による分類を入れることにした。
□インターネットの空間では国境がなく、国境がないということは物理的な位置による制約がなくなったということである。もう一つはインターネッ
トの空間では時間的な制約から解放されているということである。
- 第三章 メディアとしての可能性
□コミュニケーションについて考えてみると、コミュニケーションの成立の一つ目のポイントは、コミュニケーションはいろいろな役割分担に分けて
考えられるということ。二つ目はその役割を見た場合、コミュニケーションは対称に考えることができるということである。人が直接話すというコミ
ュニケーションは間にある空気が支えているということである。コンピュータ・コミュニケーションでは「通信の基盤」にあたる。いまインターネット
は、コミュニケーションのうちの二種類の違った役割を両方含んでいる。その役割とは「中間」の役割と「両端の人間」の役割である。いままでの
通信技術では情報の伝達の仕方に大きく分けて二つの考えがあり、それは「ユニキャスト」と「マルチキャスト」である。つまり一対一なのか、一
対多、あるいは多対多なのかということである。
□インターネットは人間が支えるコミュニケーション・テクノロジーとして、つまり情報や知識を伝達したり共有したりするメディアとしてこれまでの
メディアにはなかった可能性を示しはじめているということがいえるだろう。
□インターネットの世界は英語でなくてはいけないのかが大きな問題である。自由なコミュニケーションの場合は英語よりも日本語の方がコミュ
ニケーションが広がることが分かった。しかし、いずれにせよ基本的にはそれぞれの人間が必要な言葉を使えばよいのである。必要な情報は自
分なりに翻訳するなど手だてを考えればいくらでも情報を摂取することができる。だからインターネットはコミュニケーションに使える言語の範囲を
かなり大きく広げることができ、多様な文化を尊重し言語を尊重しつつ国際的なコミュニケーションを確立していくために大いに貢献していると言
えるだろう。
- 第四章 インターネットの変遷
□アメリカのインターネットのスタートはまず長距離のネットワークが先にでき、その後短距離のネットワークができ、それらが結びつきながら集合
としてのネットワーク、すなわちインターネットの仕組みが発展していった。日本で法律の規制や通信回線を自由に使えない状況のため、一般の
長距離のネットワークが大きく遅れてしまった。
□コンピュータ・サイエンティストにとって必要だったのは、ネットワークでソフトウェアをやりとりすることで、それには人間同士のコミュニケーションが使われた。やはりここでも障害になったのは言葉の問題であった。日本語の問題だけで
なく、国際語の考え方がいろいろ変わり解決していくとソフトウェアは飛躍的に多くの人に使われる様になり、ソフトウェアはますます良くなってくる。
□国際的な接続をすると国際電話料金のため値段が高くなってしまうという問題があった。回線料金の回線をいちいち使うのでは料金がかさむし
その負担を分ける方法もむずかしいということを痛感したため、国内も国際も専用回線でやることが決定した。
- 第五章 インターネットの重要課題
□インターネットのテクノロジーが発展していくときに重要なのはそのテクノロジーの発展とそれを利用していく人間社会が遊離しないようにするこ
とだと考えられる。インターネットは蓄積されたデジタル・データを交換・共有するための基盤である。
□インターネットというのは個人自らの責任で自由に情報を公開し、交換し、共有することができるための環境をつくっていくということに非常に重
要な意義があり、どんな人でもどんな場所にいてもどんな状況にあってもそうした環境が享受できるような技術に挑戦していかなければならない。
そのためのキーワードとして「ユービキタス・コンピューティング」あるいは「ユービキタス・インターネットワーキング」という言葉について考えてみた
い。「ユービキタス」というのは普遍性、遍在性、要するに遍くどこでも存在するという意味の言葉である。このように誰もがどこにいてもデジタル・
コミュニケーションの基盤を享受できるような環境をつくるためには、きわめて身近なことから非常に新しい技術までが必要であると考えられる。初
歩的な問題としてインターネットの基盤、そしてコンピュータの普及が挙げられる。つまりインターネットにつなぐ回線料金やコンピュータが高価だっ
たり、あるいはセキュリティ、安全、プライバシーである。もともとインターネットは情報の公開、共有を進め、情報や知識を社会資源として役立てて
いくことが目的であったため、インターネットに秘密を守るような技術が組み込まれていないのは当たり前で、むしろ秘密をつくらないようになってい
る。しかしいまはインターネット社会の中でセキュリティという新しい技術の要求が生まれ、その要求に応える技術開発は進み、技術的にはもう完
成されている。その技術の一つとして、公開カギ暗号のメカニズムが開発されている。この仕組みの一番のポイントはパッケージを閉じるカギと開
くカギが違うということである。技術を利用していく側の人間がそれをどのように理解して使っていくのか、そして自分持っている知識や情報をどの
ように社会の中に公開し、あるいは公開せずに守っていくのかという問題で、これはいわゆる情報社会でのコンピュータ・リテラシーの問題になる
だろう。
□インターネット環境などが身近になってくるこれからの時代には、新しいモラルやエチケットを考えなくてはいけない。
□インターネットの大きな特徴の一つは国境がないということである。インターネットは「国」という地理的な制約、気候的な制約をはずして「国」とい
うものを考えることができる環境を提供している。これをきっかけにそもそも人間の集まりというものは何で、ルールが何であるかという議論に多くの
人間が取り組んでいけば人間にとって良いことである。
ホームページに戻るにはここをクリックしてください.